【TFA2025(TFA DXコース)第4講 開催報告】
2026年1月18日(日)、TFA DXコース第4講は、JP Baltic株式会社代表取締役であり、日本貿易振興機構(ジェトロ)バルト三国レジデントエージェントとしてもご活躍の吉戸 翼(よしと つばさ)氏を講師にお迎えし、「電子国家エストニアに学ぶ」と題して開催いたしました。

吉戸先生は立命館アジア太平洋大学を卒業後、日本・英国・エストニアの企業で営業や事業開発に従事され、2017年にエストニアでJP Baltic株式会社を設立。以来、日本企業のバルト三国進出支援や市場調査、官民連携プロジェクトに取り組んでこられました。本講では、エストニアのデジタル国家としての取り組みを通じて、デジタル社会の本質と可能性を学びました。

講義は、
(1) エストニアの電子国家の仕組み
(2) 国民生活の変化
(3) デジタル社会で女性が活躍できるチャンス
といった3つの柱で進められました。
まずエストニアという国の特徴として、人口135万人という規模ながらEU加盟国の中でもデジタル化が進んでいる背景が紹介されました。ICT人材がGDPの約1割を担い、行政・経済・生活インフラがデジタル統合される仕組みが強みです。日本では時間や場所を要する手続きが、エストニアではオンラインで完結する日常の利便性から、国家としてのデジタル基盤の厚みを実感しました。
特に行政サービスのデジタル化はEUトップクラスで、行政手続きの多くがオンラインで完結します。例えば引越し手続きは、代表者が申請をすれば家族や大家への通知までシームレスに連携し、個人情報は共有・参照型のシステムで管理される仕組みが紹介されました。また、「電子IDカード」を基軸に、病歴・保育園申請・離婚手続きに至るまで、オンラインサービスの利便性が生活の中心となっています。行政のデータはX Roadと呼ばれる統合プラットフォームで接続され、国家機関・銀行・税務署などが安全にデータを共有しています。
教育面でもデジタルの活用が進み、教員の業務時間短縮や欠席管理の効率化が進むなど、日々の学びの現場にも変化が見られました。さらに、起業環境の整備についても、登記が短時間で完了する仕組みや多くのスタートアップが生まれる背景が紹介され、デジタルが国家戦略として社会に根付いている様子が共有されました。
講義後半では、日本とエストニアのデジタル化の違いについて。日本では個人情報保護や紙文化、縦割り組織などがデジタル化のハードルとなる一方で、エストニアではデジタル化が行政サービスの基盤として受け入れられ、生活のあらゆる場面で活用されている実例が議論されました。
また、講義中の意見交換の中では、「情報の透明性と信頼性」「社会全体での失敗への寛容さ」といった視点が出され、日本の行政サービスが抱える課題についても多角的な考察が行われました。
質疑応答では、デジタル政府における責任の所在や、民間企業のデータ利用のあり方、エストニアの電子IDシステムに関するセキュリティの現実的なリスクまで、多くの質問が寄せられました。吉戸先生は、「完璧さよりも、利便性を重視した設計」「失敗を恐れず進める文化」が今のエストニアには根付いていると丁寧に説明されました。
今回の講義は、私たちが暮らしの中で感じる“デジタル化”の意味を改めて考える良い機会となりました。また、デジタル社会は単に技術の導入ではなく、社会構造や制度と結びつくことで初めて日常の利便性や社会的価値を生むことを学べた時間でした。

次回第5講は、2月1日(日)ふれあい健康館第一会議室にて開催予定です。
今回学んだ知見を活かし、これからの講座と受講生の発表がどのように深化していくのか期待が高まる講義となりました。